ー1700年代後期から1837年まで ジョージアン時代の茶器ー
ニューホール窯によるエナメル彩と金彩のみで装飾された高級ラインのティーボウルです。
植物を模したゴールドのガーランド、その間に装飾された水色の花はエナメルで少し盛り上がるように描かれ、赤い小玉がところどころに装飾されています。
シャンクト・フルーテッドと呼ばれる縦縞の凸模様を少しねじった当時の流行のシェイプ。鮮やかに発色するエナメルの塗料で矢車草が愛らしくハンドペイントされています。
英国の窯は超初期は中国や日本のオリエンタルな作品の画柄に影響を受けていましたが、その後は先に磁器製作を成功していたフランスなどの大陸の作品に影響を受けていきます。この茶器がつくられた時代のフランスといえば…マリーアントワネット王妃。彼女は薔薇はもちろんですが、矢車草など牧歌的な野の花を特に好んで食器の柄にも用いていました。200年以上前と言えば、本の中のお話しのようですが、これら器達は実際にその時代につくられたものです。
Twisted Shanked Flutingとも呼ばれるこのシェイプは、縦に波打つ線がツイストするように造型されています。
ニューホール窯のパターンブックの著者パトリシア・プリラー氏や、エクセターのオークショニア専属鑑定士にも相談したところ、光の透過性や素地の色や状態、成型の特徴からウースター(デイヴィス/フライト期)の作品であろうとご意見をいただきました。S型が連なった花紋は、ニューホールやダービーなども同様の色で同じ絵付けを施しており、人気の柄だったことが伺えます。
各フットの内側に「D」というイニシャルが手書きされていますが、この位置にあるものはメーカーズマークではなく、絵付けを施したアーティストのサインと考えられています。
18世紀末の英国製ティーボールとソーサー、そしてプレートのセットです。
このプレートは、お茶のお供とされていたパンのための器です。
このシェイプとパターンは当時、複数の窯で製作されていたため窯元は明確ではありません。ニューホール窯の研究者であり「A partial reconstruction of the New Hall Pattern Book」の著者:パトリシア・プリラーさんからは、成型の特徴からウースター窯の作品だとご意見をいただいています。
素地はややグレーがかった暗めの色で、釉薬はグリーン/ブルー系の色味を帯び、ウースターのステアタイト磁器の特徴もありますが、やや磁胎が他の同時期のウースター窯の作品に比べて厚い気もします。
ペッキングの跡は、ティーボールの裏には確認できます。ソーサーの裏には部分的にペッキングの跡、プレートの裏にはペッキングが施されておらず、釉薬が溜まっています。
バックスタンプはありませんが、高台の内側にハンドペイントで「J」のイニシャルがあります。この場所にあるものは、アーティストのサインと考えられています。
2種類の茶葉をそれぞれ保管するキャディの間に、オリジナルのガラスのミキシングボールが収められています。
通常オリジナルのミキシングボールが残っているキャディというのは、現代では本当に希少です。さらにこのキャディのように、鍵が残っていてしかも壊れていないのもまたしかり。
18世紀の茶器にご興味ある方は、アンティーク・シルバーのページのモートスプーンもご覧ください。