435. 1700年代ティーキャディ(c.1740-1750)
英国はジョージ2世時代の後期、1700年代半ばのお品と推測されています。
イギリスで初めて磁器が焼成されたのは1740年頃と言われています。
それは1743年に開設されたチェルシー窯(テムズ河の西岸)で、当初はマイセン窯の写しが多く、東洋風のモティーフも多く作られていました。
次第に意匠は西洋的になり、セーヴル風の華やかなものやロココ調の様式が採用されていきます。
同様の時期に磁器を製造していたのが、ボウ窯(テムズ河の東岸・1744開窯)。
西洋的なものとは違い、シノワズリや柿右衛門写しという作風が好まれて製造されていました。
このティーキャディがこれらの時代に生まれたものだとすると、まさにこういった茶器の、どの作風にも調和する魅力がありますね。
落ち着いた高級感はこのうえなく、そのシンプルな造形と色艶、質感が特別な貴族にだけ所有することが許された貴重さを物語っています。
そしてハンドルや鍵周りの装飾が、西洋的な華美をアクセントで添えています。
脚の装飾がまた安定感があって、派手さとは違う落ち着きと麗しさがあります。
英国に初めてお茶が持ち込まれてから約100年後のティーキャディと言えど、当時はお茶はまだ高級品。
宝石と同じように鍵付きの美しい箱に大切に保管したい、そんな思いがこめられたキャディは、また機能的でもあり、茶葉をできる限り新鮮に保管できるよう、すべてのコンパーメントに金属の箱が見事にフィットする形で納められています。(真ん中は蓋なし)
私はこれまで、このような蓋つきの金属の取り出し可能な箱が付いているものは初めて見たのですが(多くは、このキャディの真ん中の部屋のように蓋がないもののみでした)、ひょっとしたら古いものはこういった金属の箱が付いたキャディが作られていたものの、現存するものが殆ど無いのかもしれません。
このフィット感がまた、手作りとは思えない繊細な細工だと感心させられます。
鍵も現代のものとは完全に違い、気を付けながら差し込み、ゆっくり回すとまさに手作りと誰もが思える体感を得ることができます。
手探りで、鍵がかかるまでゆっくり回すと、ある場所でカチリと空間に響くような音は、不器用でありまた美しくもあります。
(ゆっくり慎重に回る方へ動かしてください。)
1. 蓋の内側の模様は、インレイドのように見えましたが、紙(当時の壁紙のような厚く丈夫なもの)にフェルト生地を合わせたようなマテリアルが貼られて出来ており、それが破れている(1.3cmぐらい)箇所があります。
2. 背面の左側の金具の下に長さ約横5〜6cm、縦約2cmのサイズのパッチがあります。これは木目が違うので修復の可能性がありますが、色合いは同じなのであまり目立ちません。
※背面の腹にある傷のようなものは、木目で、凹みではなく凸です。
現存するだけでも奇跡的ですが、このように修復や破損が少なく当時の輝きを放ったままのティーキャディは本当に珍しい希少なお品ですね。素晴らしいという言葉では足りないほどです。
サイズ:横約29cm、縦約17cm、奥行き約15cm
¥350,000
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