431. ミントン／花のブーケと金彩・アーティストプレート２枚

1841年製のミントン窯の総手描きの美しいデザートプレート２枚のご紹介です。

この完璧な格子模様が見事なシェイプは、同窯で1800年代半ばにのみ制作された、有名なニューキャッスルシェイプです。1840年頃にヴィクトリア女王が「世界で一番美しいボーンチャイナ」とミントンの品々を称賛したことは有名なエピソードですが、それも相まって、この頃のニューキャッスルシェイプは貴族の間でも大人気、オーダーが相次いだとききます。

ミントンの専門書「MINTON Pottery & Porcelain of The First Period 1793-1850 / Geoffrey A. Godden著」にも、やはりこのシェイプについては２ページ半に渡って紹介されており、1840年代にとても人気だったと言及されています。

同シェイプはミントン窯の専門書だけでなく、英国のアンティーク陶磁器の専門書にもよく紹介されており、現代でもやはりコレクターに人気で、入手困難のシェイプのお皿です。見つけることができても、貫入が多く釉薬が茶色っぽく変色してしまっているものや、格子部分にひびやヘアラインがあるものが殆どで、なかなか完品を見つけることはできません。

多くのニューキャッスルシェイプのお皿は、格子の部分がナイフで切り抜かれた透かし彫りになっていますが、このお品は切り抜きが無い珍しいタイプで、エナメル彩の代わりに濃厚で純度の高い金の装飾が施されている、高級感のある作品です。

最も素晴らしい部分は、この花絵が当時英国で頭角を現し全面に躍り出たミントンの中でも、花や鳥の絵でトップの座にいたアーティスト、ジョゼフ・バンクロフトに手掛けられていることです。前述の著書では、同じ種類のプレートの横にバンクロフトによる絵付けと明記されています。このジョゼフ・バンクロフトというアーティストは、花や鳥の絵で同窯のアーティストたちを率いるトップの腕前だったことはこのミントンの専門書にも別記されています。

同書に掲載された写真のプレートのパターン番号が4822番、その下の鳥絵のプレートのパターン番号が5003番で両方ともに1841年製と書かれています。今回ご紹介させていただくプレートは、パターン番号がその間の4839番であることから、同じ1841年と推定いたしました。（ミントン窯の製作年代を表す刻印は1842年から使用されていたため、このお皿に刻印はありません。）

また、ミントンの窯印はありませんが、このお品は同書でも説明されているのですが、オリジナルはコンポートとデザートプレート６枚のデザートセットです。当時のこういったセットでは、コンポートまたはお皿１枚にのみ窯の刻ｍ印がされて、他のものにはされていないのが普通です。ただし、パターン番号と磁器やデザイン、シェイプからミントンのこのお品であることは明らかです。

ジョゼフ・バンクロフトの絵付けは、色味が非常に柔らかく、強さよりも全体のふんわりしたトーンのバランスが見事です。例えば、紫色ひとつにとっても、複数の色やグラデーションで表現されていて、色彩が優しいけれどとても豊かなんですね。茎やとげ、葉の輪郭なども、黒や緑の濃い色が使用されず、茅色や香染色（ややピンク寄りの淡い茶色の分類）が使用されています。とても繊細で、花の特徴を生かしたロマンティックな雰囲気を醸し出しています。

小さな蕾の先まで、筆が丁寧にコントロールされて正確に描かれているところを見ると、このお品の完成度の高さにため息がもれます。

今回は２枚の入手で、両方ともコンディションはダメージも貫入も無い奇跡的な状態です。小傷やスクラッチも殆ど無く、絵の色合いも出来立ての透明感と鮮やかさがそのまま残っています。白磁はもちろん、当時世界で一番美しいボーンチャイナと謳われたとおり、最高品質の滑らかさと白さを保持しています。粗探ししますと、金彩が少し擦れがあります。目立たない程度ですが、各商品のお写真でもご確認ください。